教える仕事をしていると、どうしても「話すこと」が増えます。
説明したり、伝えたり、時には励ましたり。
しかし最近、「聞くこと」の大切さをあらためて感じる出来事がありました。
ある日、ある方と長い時間話す機会に恵まれました。
最初は他愛のない話から始まり、だんだんと心の中のことまで話してくれました。
私は、うなずきながら、ただ聞いていました。
アドバイスもしないし、特別なことも言わない。ただ、静かに聞く。
帰り際、その方は少し照れくさそうに、でもどこかほっとしたような表情でこう言いました。
「たくさん話しちゃってごめんね」
その一言が、なぜかずっと心に残っています。
人って、誰かに話を聞いてもらうだけで、少し安心できるんですよね。
「わかってもらえた」と感じるだけで、気持ちが前を向くこともある。
そして私自身、その時間を通じて大切な気づきを得ました。
話を聞くことが、ただの「聞き役」以上の意味を持つのだと思います。
塾で子どもたちと接していると、つい成績のことや学習のことに目がいきがちです。
でも、その子がどんな思いで机に向かっているのか、どんな気持ちで今ここにいるのか。
そんなことにも目を向けていきたいと、あらためて思いました。
「教える前に、安心できる関係をつくること」
それが、信頼のはじまりであり、学びの土台になるのではないか。
そう思える出来事でした。